京都人

台湾にとどける京の真髄
京都の人々が本当に通う場所

京都人 Vol.004下緑町

2016年08月17日 UPDATE

店主 田守幸男

元・老舗なまず料亭の料理長が構えた、小さな和食店。

「作り手がどんな気持ちでこしらえたか、 食べればすぐわかる」。

保莉 店主 田守幸男

季節のものを見たら
料理がしたくなる。

 みそ漬けにした切り身の鮭には、鉄串が打たれている。焼き立ての出し巻き卵は、京都人好みのだしたっぷり。季節代わりの小鉢、この日はちりめん山椒と、ナスと豚肉、こんにゃくを炊いたん。隠し包丁の入ったていねいな味だ。
 さらに夏はそうめん、冬は味噌汁。ごはんと漬物がついて、昼ごはん1000円也。これはお値打ちだ。懐石を名乗ってもおかしくないほどの繊細な手技に、和食好きならすぐに気づくだろう。
 

季節とともに生きる
和食のおもしろさ

 
 「たいしたことしてない。当たり前のことをしてるだけなんだから、大げさに書かんでおいてね」と店主の田守幸男さんに何度も念を押された。
 田守さんの当たり前は「季節とともにつくる」ことだ。実山椒が出回りはじめたら、ちりめん山椒をこしらえたくなる。青梅を見かけたら、剥いてとろりとした冷や蜜に浸したくなる。初夏、天然の鮎は、干物にしたい。夏のはもは骨切りして、おとしで出そうか。秋になって松茸が出始めたら、脂の乗ったはもと合わせて蒸したい……。
 「つくることが好き。和食がいちばん季節が感じられると思います」。
 誰もが毎日食事するからこそ、外食するからにはそれなりのものをお出しし、楽しんでいただきたいという思いがある。
 「料理をする人間としては、普通のことでしょ?」と田守さんはほほえむ。
 

老舗の料理長から
カウンターの割烹へ

 
 田守さんは奈良出身、実家は料理旅館だった。「門前の小僧、経を読む」よろしく、和食に興味をもった。京都の大学を卒業後、いくつかの和食店を経て、30歳から勤め始めたのが京都洛北、山端にあった料亭「十一屋」。江戸寛永年間創業、なまず料理で知られる老舗は2006年に閉店。料理長まで勤め上げた田守さんは、この地で保莉を開いた。
 「これまでは厨房に入りっきりだったから、カウンターは初めてで、ちょっと怖いくらい。なにしろお客さんの様子が直接見られるからね。違いますよ」。
 奈良、大阪、京都。関西の和食職人はどこで修行したかで味が変わるが、田守さんが好きなのは京都だ。
 「京都は無理に味をつけるのを嫌うでしょう。素材を活かすのがいいよね」。
 味の濃い薄いに土地の好みはある。田守さんが仕事ぶりに一貫して注目する。
 「その土地の気候風土で好まれる味が違うのは当然。でもね、どんな料理でも作り手がどんな気持ちでこしらえたか、食べればすぐわかりますよ」。
 そう言って、田守さんは鋭角に研ぎ澄まされた包丁で剥いた、梅の皮を取り出した。リンゴの皮むきの要領で、直径4㎝ほどの梅の実の皮が、均一な3㎜幅で、長々とつながっている。神業! と驚くと、「和食の料理人なら、このくらい当たり前ですよ」。まったくもって脱帽だ。

カウンター席に小上がりの座敷席もある。「一人でやっているので、予約をしてくれたほうがありがたいです」。夜のお品書きには、どじょう柳川煮や鮎うるか、いさだ田舎煮といった淡水魚が充実している。

カウンター席に小上がりの座敷席もある。「一人でやっているので、予約をしてくれたほうがありがたいです」。夜のお品書きには、どじょう柳川煮や鮎うるか、いさだ田舎煮といった淡水魚が充実している。

昼の定食は1000円。

昼の定食は1000円。

撮影後、鍋を戻そうとすると「鍋肌に実が触れると具合が悪くなるから、置いておいてね」と制された。繊細な味を生むのは、食材への配慮があってこそだ。

撮影後、鍋を戻そうとすると「鍋肌に実が触れると具合が悪くなるから、置いておいてね」と制された。繊細な味を生むのは、食材への配慮があってこそだ。

Shop Data
店舗名 保莉
住所 京都市北区紫竹東大門町19-5
電話番号 075-493-0778
営業時間 12時~14時、17時半~22時
定休日 月曜日
URL
LINEで送る
Pocket

Other Kyoto-jin

京都人・最新刊

Vol.004

下緑町

2016年6月発行

設置場所はこちら

京都人について

京都人004_Kyotojin004

Pick UP

Kyoto-jin News

LANGUAGE

日本語 繁体中文