京都人 Vol.003新町御池
2016年06月17日 UPDATE

京都の喫茶文化継承人。
「“どこもないし、あそこ行っとこう” そう言われたら本望」。
喫茶店 la madrague オーナー 山﨑三四郎裕崇
カフェではなく、喫茶店。
「学生の街」と親しまれる通り、喫茶店が多いのが京都の特徴でもある。しかし、かつて仲間と通ったあの喫茶店が、知らないあいだにビルになっていた、そんな淋しい思いは誰もが経験していることだろう。喫茶マドラグを営む山﨑三四郎裕崇さんもその一人。押小路の古い喫茶店セブンの跡地で、そのイメージを継承しながらアレンジを加え、2年前にこの店をオープンした。「クンパルシータという喫茶店が大好きだったんです。ママさんが亡くなって、そのままその店も閉められたとき、ものすごく悔しい思いをしたんです。それがきっかけですね」。木屋町のみゅーず、二条の幌馬車など、誰もが思い出多い名喫茶がなくなり出した数年前から、山?さんは喫茶店を京都の文化遺産の1つだと考え出した。志を同じくする若い仲間で「京都喫茶文化遺産」を立ち上げ、跡継ぎがいない名喫茶を自分たちが経営し、その良き文化を継承するため奮闘している。
前店主と常連客の思いを
最大限に汲みながら継承。
「やはり、順調に営業せねばならないので工夫はしています。軽食や甘いものをメニューで増やしたり、営業時間を伸ばしたり。でも前のオーナーの思いは最大現に汲み取って、以前のお客様も引き続き来ていただけるようにしています」。事実、マドラグには今でもセブン時代のタクシーの運転手や近所の住民が珈琲を飲みにやってくる。「少しでも継承したいので、グラスやカップもそのままです。珈琲も同じネルドリップで」。カウンターで奥さんが用意する珈琲サーバーは、あの頃と同じ、白く大きな琺瑯のポット。往年のセブンを知る客には、たまらなく懐かしいはずだ。
ていのいい、客の止まり木。
そんな喫茶店でありたい。
学生時代、木屋町のロックカフェやフランソワでアルバイトを重ねた山﨑さん。当時のマスターが懇々と語る「喫茶店論」に触発され、その後、多くのカフェや喫茶店の店舗開発に携わっていくうちに自分流の喫茶店観が確立していった。
「カフェって、オーナーの世界観を見に行く雰囲気があるでしょう。それはそれで楽しいんです。でも僕は、ふらっと休めるていのいい止まり木のような、喫茶店独特の文化が好きなんです」。例えば1時間の昼休み。店に入って5分で食事が運ばれてきて、10分で美味しくいただき、残りの40分ほどをゆっくりと珈琲を飲みながらくつろぐ。山﨑さん曰く、これが喫茶店の神髄なのだそう。
「結局、時間を売ってる気がします。そこでどれだけ快適に過ごせるか。普通っぽく見えたメニューが、思ったより美味しくて、思ったよりボリュームもある。だから支払う時に満足してしまう(笑)」。巷にたくさんあるカフェとはまた違う、喫茶店の心地良さ。山﨑さんが営むマドラグは、確かにカフェでなく喫茶店である。

お店情報
店舗名 | 喫茶店 la madrague |
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住所 | 京都市中京区押小路通西洞院東入ル北側 |
電話番号 | 075-744-0067 |
営業時間 | 11時半~22時(昼11時半~・夜18時~) |
定休日 | 日曜日 |
URL | http://madrague.info/ |