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京都人 Vol.003新町御池

2016年06月17日 UPDATE

マスター 谷口慶三

戦後の京都とともに歩んだ喫茶店。

「ちっちゃな喫茶店やけど、 みんな気にしてくれてはったんやなって」。

COFFEE ポケット マスター 谷口慶三

偉大な“ママ”から
受け継いだもの。

 烏丸通から押小路を東に入ってすぐ、赤いテント屋根がかわいい昭和レトロな小さな喫茶店「ポケット」。波ガラスがはめられた木のドアを開けると、こげ茶色の柱に真っ赤なソファ。そのコントラストが一見して目立つが、喫茶店特有のゆったりとした空気が流れ、不思議と落ち着けることこの上ない。店の歴史が醸し出す雰囲気に包まれ、至福のくつろぎをもたらしてくれる。店の創業は1945年というから、終戦の年である。喫茶店ポケットのママとして、戦後の京都の街を昭和~平成と、実に58年間に渡ってずっと見続けてきたのが、谷口節子さん。母親とともに空襲から逃れて神戸から京都に移住、戦後すぐに店を開いた。カタカナの屋号も、使用が許されて間もないころであろう。最初は闇市で小豆を買ってぜんざいを売っていた。徐々に砂糖やコーヒーが出回るようになり、美味しい珈琲が飲める喫茶店として、周りのサラリーマンがつかの間の休息に立ち寄った。
 

老舗喫茶店の再開と
2代目の決心。

 
 ポケットは節子さんが高齢のために、2003年で店を閉めることになる。以来、8年が経ち、節子さんの長男、慶三さんが飲食店のフランチャイズ企業を定年まで勤め上げ、2011年に慶三さんがポケットの2代目に。ポケットは晴れて再スタートを切ったのである。「自分も仕事で喫茶店やってたし、閉めたまま置いとくのもなあ思いましてね、まあ老後のたしなみみたいな感じでね(笑)」。その気負わない、軽い感じとは裏腹に、かつての常連客はもちろん、ずっと閉まったままだった、味わいのある喫茶店を気にかけていた人の多さに気づかされたという。再開後の新生ポケットは、小川珈琲の豆で淹れた香り高い珈琲と、進々堂の雑穀パンを使ったサンドイッチの美味しさが秀逸。「せっかくやから美味しいのを置きたいからね」という2代目の心意気とサービス精神は、その手ごろな価格にもあらわれている。
 

外観の不思議。
ポケットの「ト」は、
“うだつ”。

 
 表から店を見た時に、木でかたどった“ポケット”の赤い字が印象的だが、どういうわけか「ト」だけが外れたままになっている。マスター曰く、「店を再開するときに全部きれいに直したんやけど、トはきれいに跡形が残っていて、十分見えるし、いっこ抜いとこかな、逆に気になっておもしろいかなって」。実は、後で奥様がこっそりと真実を教えてくれた。「あれは“うだつ”みたいなものなんです。この店をずっと守ってきたお母さんに年数ではかなわないけど、あの人なりに、母親に恥じないような店になったと思えた時にはじめて、トが加わるんや思いますよ(笑)」。なるほど、ポケットと4文字美しく揃う頃には、偉大な節子ママも、ゆったりと珈琲とサンドイッチを召し上がれるだろう。

半世紀以上に渡って店を守ってきた節子ママ。その存在がポケットそのものだった。

半世紀以上に渡って店を守ってきた節子ママ。その存在がポケットそのものだった。

ポケットのトが外れたままなのは、2代目の、偉大なる節子ママへのリスペクトの象徴。

ポケットのトが外れたままなのは、2代目の、偉大なる節子ママへのリスペクトの象徴。

香ばしい進々堂の雑穀パンに、具がたっぷり挟まったミックスサンド。450円という値段も嬉しい。

香ばしい進々堂の雑穀パンに、具がたっぷり挟まったミックスサンド。450円という値段も嬉しい。

Shop Data
店舗名 COFFEE ポケット
住所 京都市中京区押小路通烏丸東入ル
電話番号 075-231-2660
営業時間 8時~18時
定休日 土曜日
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